secret time
心の奥が悲鳴をあげた
身体中が泣いていた
【薄桜鬼で創作企画。】転生妄想:藤堂平助編
【薄桜鬼で創作企画。】
SSL設定使用の転生シリーズ。
この企画にあたっての簡単な説明と設定は、
⇒転生妄想企画にあたりにて。一読いただけると助かりますん。
あくまでもコンセプトは、
「現代の平和な日常の中で千鶴と幸せになる」5人。
そしてそれを見守る、記憶をもつキャラたち。
ヒロインは千鶴です。夢にはなり得ません、きっと。
では、二人目。お相手は、藤堂平助。
◆◇藤堂平助編
「なんかご機嫌じゃねーか、左之」
「ん?」
職員室に戻ると、そう新八に声をかけられた。
「なんかいいことでもあったのか?」
「…ああ、ちょっとな」
さっきの光景を、耳にした会話を思い出して、自然と笑みがこぼれる。
少しだけ、胸が軋むような気もするけれど。
「なんだよ、早く言えって!」
「……お前にはやっぱ教えないでおくわ」
言っても意味がわからないだろうしな、お前には。
その一言は辛うじて、口に出さずに飲み込んだ。
+
心のどこかでずっと、悔しさを捨て切れずにいた。
藤堂平助という、弟のような大事な仲間に対して。
そしてその平助を選んだ、妹のように気付けば思っていた千鶴に対して。
あの頃、誰よりも幸せになってほしいと思っていた、あの2人に対して。
勝手にも、申し訳なさのような気持ちを抱いていた。
この時代まで、だ。
あの2人にはもっと違った、平凡だが平和な暮らしをしてほしかった。
それなのに平助は俺達から一度離れ、
帰ってきたときにはもう人ではなく、――羅刹となっていて。
どんなにお互いを想っていても、あの時代に羅刹として誰よりも新選組のために働いた平助に、
“普通”の日々など望めるわけがなかった。
後悔していた。
もっと出来ることがあったのではないか、と。
あの2人の為に。
新八と共に隊を離れてからも、ずっと。気にしていた。
それはもちろん、新八も同じだった。
俺達は確かに、3人組だったから。
可愛かった。
平助も、千鶴も。
だからこそ、あいつらの運命が恨めしくて。
この時代で、2人と出会ったときは心臓が止まる思いがした。
なんの冗談だ、と。目を疑った。記憶も疑った。
だがの、どこからどう見ても想い合っている2人は、
確かに俺が知っているあの2人で。
「私、…昔から、急に胸が締め付けられて苦しくなって哀しくなって、…それで泣きそうになることがたまにあってね」
さっき校内を見回りしてたとき、夕暮れに染まる教室から聞こえてきた会話を思い出す。
「でも、頭を撫でてもらったり、……平助くんの側にいるとそれがなくなって。昔から、すごく安心できたんだ」
なんでだろうね?
それほど大きくはない声で千鶴がそう言うと、しばらく黙っていた平助が顔を上げた。
…いや、そのシーンを直接見たわけではないのだが。
その様子が、目に浮かんだ。あのいつもの笑顔の平助が。
「俺達、前世でも付き合ってたのかもな!」
一瞬、泣きそうになった。
思わず、そうだよと言ってやりたくなった。
そうなんだ。お前らは前世でも幸せな恋人で。
時代や環境、いろいろな事情があったけどそれでも。
固い絆で結ばれた、かわいらしい恋人だったんだ。
……でも、そんなこと言えないよな。
そしてきっと、今のこいつらには、――言う必要も、ないのだろう。
早く帰れよ、と教室を覗きこんで声をかけた時の、
照れて慌てた2人の表情を思い出して、また小さく笑う。
時間は十分な程、流れた。
今度こそ、未来ある幸せを、あいつらも手に入れることができる。
「ほんとにいいことがあったみてーじゃねえか」
「土方さん」
降ってきた声に顔を向けると、呆れたように笑う土方さんがた。
近くの椅子に座りながら続ける。
「新八が騒いでたぞ。不気味なくらい機嫌がいいのに理由を教えてくれないって」
一度言葉を切る。
そして俺と同じく、あの頃の記憶を持つ土方さんは、少しだけ伺う表情を見せた。
「平助か?」
「……ああ」
その問いに短く、笑みと共に応える。
さっきのこと、土方さんにも教えてやるか。
この人もなんだかんだであいつらに甘い。昔からそれは変わらないんだよな。
きっと、同じように小さな笑みを見せるに違いない。
「だから言ったろ、あいつらは放っておいても大丈夫だって」
「土方さんの言う通りだったぜ。……今日あたり、飲みに行かねーか?」
「…付き合ってやるから、何がそんなに良いことがあったのか教えろよ」
「もちろんだって」
時間は十分な程、流れた。
時代は変わり、世の中が変わり、――当然のように、あの頃のことを覚えているのは俺と土方さんだけで。
それを少し寂しいと言ったら、そりゃ……嘘になってしまうが。
俺達の関係性も、人となりも、何一つ変わっていないことに気づいているから。
それが奇跡だってことも、ちゃんと理解っているから。
あの頃には願うことすらできなかった、この時代での幸せを。
見つけていくしかねーんだと、思う。
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