secret time

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今なら、ね。断言できる気がするんだ。
これから先、いつまでも。どんなに離れる時が来ても。
僕は君だけを愛し続ける、って。



夢幻 - a true love tale -



夜の庭に、静かに一人で寝転がる。少し胸が痛むのには気付かないふり。
すぐそばの桜の木から、はらはらと風に揺れて花弁が舞い落ちていく。
それをぼーっと眺めながら、
人の運命なんてものも、案外あんな風に儚くて幻のようなものなのかもしれないな、
なんて思ったりして。

ゆっくりと、目を閉じる。

瞼の裏に映ったのは、近藤さんや土方さんたち新選組のみんな、そして――あの娘。
初めて僕が、この自分の手で、護りたいと思った相手。
この子と出会うために僕は生まれてきたんじゃないか、とまで思ってしまうくらい大切な、
僕に生きる意味をくれたかけがえのない女の子の姿だった。



胸に手を当てて、鼓動を確かめる。
「大丈夫、まだちゃんと生きている」
そう自分に言い聞かせるのが習慣になったのは、一体いつからだろうか。

労咳だと松本先生に言われ、それでも刀を捨てられなかった僕が、「生きたい」だなんて。
……あの日の、あの子のぬくもりが、優しさが、そして切ないくらいの想いがなかったら、
こんなこと思ったりしなかっただろう。

一度咳をする度に、一歩また闇に近付いていく気がして。

「…でもこの痛みすらも生きている証で、もっと君と生きていきたいと願う力になるんだよ」

そう呟いた瞬間、また咳が出た。



このまま永遠に、この地で二人で生きていくことができたならどんなに幸せだろうか。
そう願わずにはいられないけれど、夜が明けたら朝はやってきて。
夢は覚め、僕の身体のオワリ、あの子とのサヨナラはまた一歩迫ってくる。

これが現実。


「僕だってわかってるんだ」

誰に言うまでもなく、小さく口にする。
望むもの二つを同時に手にすることはできない、って。
そんなの、痛いほどわかっている。


みんな、…左之さんや新八さん、平助、そしてきっと一くんも。
新選組という居場所と自分の信念とで、悩みながらどちらかを選んでいったのだろう。
土方さんでさえも。
新選組を、あの「誠」の旗を守るために、いろんなものを犠牲にしてきたのは知ってるんだ。
……僕だって。
あの子を守り、あの子と生きていく道を手にするのと引き換えに。
羅刹となり、人としての自分を捨て、新選組から離れることを選んだ。

きっとそういう風にできているんだろうね、人生っていうのは。
だから。
また、どちらかを選べと言われるならば。
「僕は君の為なら」
命だって捧げるんだよ。


だけどやっぱり、あの子は泣くのかな、とか。
一人になってしまったとき、何を見て何を感じて何を想って生きていくのかな、とか。
隣でそれを見ながら一緒に生きていきたい気持ちは誤魔化しきれなくて。


悔しくて。
最後まで護りきれないのが。
一人にしてしまうのが。
悔しくて。

でも、どうしようもなくて。


「……ごめんね」


今の僕は、何もあの子にしてあげられないんだ。


あの元新選組一番組組長の沖田総司が、情けない話だよね。




ただ、僕に剣として生きる以外の人生をくれたあの子を、
僕はきっと…いや、絶対に。


「ずっとずっと愛しているから」


そっと目をあけると、月明かりの向こうに平和な未来が見えた気がした。


「生まれ変わっても、君の元に行くよ」


そして、そのときは、……一人にしてしまった分も、愛すと誓わせてほしい。